一番身近な兄は小さめだけど、私にとって別に大柄な男性が珍しいわけではない。
カイチくんだってバレー部なだけあって背は高かったし、踊子さんの弟の走太さんだってとても大きかったし。
でも、今目の前にいるこの方は彼ら以上に大きい。
身長だけじゃなくて肩幅なんかもガッチリしてるから尚更そう見えてしまうのだろうけど。
163センチの私が首を直角にして見上げてしまうということは、2メートル近いとか?
「デカイ男は珍しいか?
ちなみに194だけど。身長」
私の疑問に答えるように不機嫌そうなバリトンボイスが降ってきて、ビクリと肩を竦める。
ヤバイ。思わず凝視しちゃってた…。
「珍しくないです!
あの、えっと……大変失礼しました!」
思い切り気まずくなって、シュタタツとその場から立ち去ろうとした私を再度バリトンボイスが呼び止める。
「おい。本当に入学希望じゃないのか?
こんな時期から勉強始めることは無謀だけど、頑張ってみる価値はあるぞ?
もし、やる気が少しでもあるんなら俺が何とかしてやるよ?」
そこには、意外にも本気の思いやりが滲んでいるような気がして、足を止めた私はまた首を上に向けてしまった。
黒いセルフレームの眼鏡の奥の瞳は優しげで、よく見れば全然怖くない人に見える。

