テレビでコマーシャルをやるような大手ではないけれど、個別指導にも力を入れる人気の予備校だとは聞いていた。
聞いてはいたけど、私が思っていたよりずっと大きくて立派な予備校でちょっとびっくりしてしまった。
建物の前で立ち尽くす私の横を次々と生徒さんたちが通り過ぎて建物に吸い込まれていく。
ちょうど授業が始まる時間帯とかなのだろうか?
ふと、兄に会いたいと思ってしまった。
香折さんからの伝言を伝えるために電話して以来全く音沙汰がない。
間違いなく連絡はしてくれているだろうけど、その結果はどうなったのだろう?
ゆかりちゃんとの話でまた私の中でクローズアップしてしまった香折さんの存在。
自分の成長を最優先にして、香折さんのことは気にしない。
今でも自分に言い聞かせているが、全く無関心でいることはやっぱり無理だ。
「入学志望者?
そんなところでボーっとしてないで入ったら?」
背後から突然声をかけられて飛び上がるほど驚いた。
「い、いえっ!
そんなんじゃありません。すみません」
慌てて振り返った私の前に立ちはだかっていたのは大巨人。
私が首を直角にしないと見上げられないくらい背が高い男の人だった。
今度は物凄い威圧感を感じて後ずさりする。

