『電話で黙られちゃったら寂しいんですけど?』
「ごめん……。ちょっと考えごとしちゃった」
素直に謝ると不貞腐れていた雪がクスリと笑う。
『じゃ、今夜はこのへんにしておきますか?』
「い、いや。ちゃんと雪の話聞くよ?
ごめんてば」
『いーよ。全然怒ってないし。
今夜も十分愚痴聞いてもらったからスッキリした。
千波、今日は最初から元気なかったもん。
何かあってゆっくり考えたいんでしょ?
それなのに私に付き合ってくれてサンキュね』
「雪ぃー」
電話という顔の見えない状況であっても私の小さな変化に気付いてくれる親友の存在がありがたい。
「雪、私が今思っていることを一生懸命考えて、答えを出せたら一番に聞いてくれる?」
『もちろん。
考えてる途中で脳ミソがとぐろ巻いちゃったら愚痴も聞いてあげる』
「雪……ありがとう。
やっぱり愛してるわ」
『ハハハ。それ卒業式の時も言ってたね。
今は渉にだけ言ってもらえればいいから遠慮しとくー』
明るく笑って雪は電話を切った。
本当に雪みたいな友人に恵まれて良かったと思う。
「さて…」
傍らに寄り添っていたテディを抱き上げて空色の椅子に座らせた。
元カノ香折さんのこともものすごく気になるけど。
まずは自分の成長だ。
私はそう決意してベッドに潜り込んだ。

