ミントグリーン~糖度0の初恋~





雪の話は、昨日と大して代わり映えのしないものだった。


竹田くんと一緒に教習所に通い出して、スタートは一緒のはずなのにいつの間にか竹田くんだけが先に先に進んでいってしまう。


ただそれだけのことだ。


それだけだけど人一倍負けず嫌いの雪にとってはそれだけのことではすまされないらしい。


『ーーーで、あいつがまた言うわけ。

お前は女らしくおとなしく助手席だけ乗っていればいいって。
冗談じゃないよね。

私は女だから助手席が当たり前、とか考えないからね、絶対』


息巻く雪に思わず笑ってしまう。


「で、雪は今日こそ進んだわけ?教習は。
何かでずっと引っ掛かってたよね?」


『縦列駐車ね。……また落ちたわよ』


「…………今日もダメだったんだ」


他のことはともかく、運転に関しては竹田くんの言うことを聞いてもいいと思う。


今日こそはそう言ってもいいだろうか?


超がつくほどせっかちな雪がバタバタとハンドルを回す姿が目に浮かぶ。
きっとハンドルを切るのが早すぎるんだろうな。
まだ教習所に通ってもいない私にも容易に想像がついた。


そしてその想像図に堪えきれなくて吹き出した私に雪の不満が爆発する。


『もう!何 で笑うのよ!!

私は落ち込んで電話してるってのに』


「ごめんごめん。

それにしても雪って竹田くんに女の子扱いされることとか嫌うよね。

甘えたりするの見たことないよ?」


私が日頃からの疑問をぶつけてみると、雪はしばらく黙り込んでしまった。