『もしもし?
千波、ちょっと聞いてよー』
着信はいつも通りの雪だった。
ここのところ1日と開けず電話を寄越す。
住んでいる距離は結構離れているのに、私と雪の距離は高校時代より近いかもしれない。
それくらい頻繁に連絡を取り合い、お互いの近況を報告しあっている。
それもこれもスマホの無料アプリのおかげ。
どれだけ話しても良いという後ろ楯のおかげで顔を合わせることが出来なくてもきちんと繋がりを持っていられる。
兄やシンタくんは
『便利すぎる環境はつまらない』
なんて少々おじさんじみたことを言っているが、私はせっかく便利すぎる時代に生まれたのだから、目一杯それを活用して楽しんでやろうと思っている。
便利さは楽しんだもん勝ちだ。
「今日は何かしら?
また昨日の続きじゃないでしょうね?」
『続きよ。悪い?
もう、聞いてくれる?
渉ったら仮免もあっさり合格してさ、明日から路上教習だって!』
今日もその話ですか…。
夏休み明けから竹田くんと一緒に教習所通いを始めた雪からは最近この話しか出てこない。
でも、まあ、いいか。
後ろ向きなことばかり考えてしまっていたし、親友の愚痴をじっくり聞いてやって気分を変えるのもいいだろう。
私は今夜も長丁場を覚悟した。

