ーーーシンくん元気にしてる?
そう聞かれても、すぐには答えられなかった。
香折さんがわざわざ私を探して聞きたかったことはこれだったんだ…。
なかなか言葉を発することができず、俯いたままの私に香折さんは言った。
ーーーお願いがあるの。
当然、シンタくんに会いたいって続くんだと思った。
何で今、何でこのタイミングで私たちの前に現れたのよ!
心の中では相当怒っていたけど、これは私の勝手な言い分。
シンタくんに会いたいって言われたら、私はそれをシンタくんに伝えるしかないのだろう。
その後のことはシンタくんと香折さんの判断になる。
私にはどうすることもできないじゃない。
本当に何でこのタイミングで…。
こんな綺麗な元カノさんが再登場するなんて神様の意地悪にも程がある。
心の中でべそをかいていた。
だけど、私の耳に届いたのは本当に意外なお願いだった。
ーーー日吉くんと話したいの。
びっくりして思わず聞き返してしまった。
『シンタくんじゃなくて…ですか?』
ーーーそう。シンくんじゃなくて。
日吉くんに聞きたいことがあるの。
お願い、話を通してくれないかな?
深々と何度も頭を下げる香折さんに
『何が聞きたいんですか?』
なんて訊けなかった。

