喫茶スペースの一番隅にその人はいた。
すぐに私に気が付いて軽く手をあげてくれている。
足早に彼女が座るテーブルに近づくと
「やだ。もしかして骨いっちゃってた?」
眉を潜めながら私の左手を指差した。
「いえいえ。捻挫です。
ただ今日だけは吊っておけって先生が」
ブンブンと首を振りながら答えるとホッとしたように表情を緩めた。
その優しげな表情に私は見とれる。
本当に綺麗なヒトだ。
「座って?」
そう言いながら立ち上がり、自分の向かいの椅子を引いてくれる。
「あ、あの……」
戸惑う私の横をすり抜け、きびきびとした足取りで自動販売機の方へ歩いていって
「何飲む?」
振り返りながらふわりと笑った。
「…………すみません。じゃあ、ウーロン茶を」
小さな声で答えて、引いてくれた椅子にストンと座った。
「了解。
あ、ねー、お友達はどうした?
もしかして待たせてる?」
「いえ。先に戻りました」
「そ。じゃ、ゆっくり話せるね」
ガゴン、と缶の落ちる音が響いた。

