「もう少ししたらここに来るんじゃね?
俺、ここで作業してること教えたから」
「「はぁぁぁ?!」」
これには私だけではなくゆかりちゃんも反応する。
「ちょっと、何考えてるのよ!
勝手に教えたりしないでよ!!」
「そーだよ。まずはちーちゃんに確認してからでしょ?」
「そーか?」
キョトンとしている児島くんに盛大なため息を漏らす。
「だって、ちーの知り合いだって言ってたぜ?あの人。
とても嘘ついてるとは思えなかったけど」
「は……?だからそれを確認してくれないと。
私、この大学に学生以外の知り合いなんていないはずなのに」
本当に訳が分からない。
「まーいいじゃん。
人違いならそう言えばいいだけなんだし」
全く悪びれない児島くんにもう一度ため息をつく。
この人のこーゆーところ、苦手だ。
ま、教えてしまったものは仕方ないか。
児島くんの言う通り、人違いだろうし。
諦めてペンキ缶を手にして立ち上がろうとした途端、思いきりよろけてしまった。
ずっとしゃがんでペンキ塗ってたから足痺れた…。
目の前に手を着いたら乾いていないペンキにダイブだと思って、後ろに下がろうとして……。
「ちーちゃん! 危ない!!」
ゆかりちゃんの叫び声と同時に、私に向かって
ーーーーーバルコニーが落ちてきた。

