「じゃあ…ね」 「うん。今度は東京で会おう」 何となく握手を交わして、 私は右へ。 雪は左へ。 ああ、本当に卒業したんだ。 この通学路を歩くことももうないのかな? 古びた校舎も、グランドも、制服も…全部見納め。 自分が想像してた以上にセンチメンタルな感情が込み上げてきたけど、胸を張って歩いた。 鼻先をくすぐる微かな梅の香り。 梅と納豆と黄門様が有名なこの街では、春を告げる香りだ。 シンタくん、私、高校卒業したよ。 「今のところは……なんだからね」 1人呟きながら、私は前を見て歩いた。