「千波、実家に帰らないんだって?
俺、今頃千波は帰省してると思ったからウメちゃんから電話もらってびっくりしたわ」
冷蔵庫から氷を出して氷枕を作り直すしわくちゃの後ろ姿を見ながらなんて答えたらいいのかと考えあぐねる。
「すげ…。殆ど溶けちゃってる」
シンタくんは呟きながらガボガボと新しい氷を枕に放り込んでいく。
氷なんて作り置きしてなかったから、ロックアイスを買ってきてくれたらしい。それと枕本体も。
「…………帰りたくなかったから…」
素直に話すことを決めた私がボソリと返事をするとシンタくんはそのままの姿勢で
「何で?」
「……帰る前にどうしても会いたい人がいて。
その人とは気まずく別れたきりだったから。
夏休み中にもう1度会ってちゃんと話したくて……」
「その人と話したくて?」
氷枕の口をしっかり止めたシンタくんが私を振り返る。
「うん。このままじゃ絶対イヤだったから何とかしたくって……」
「その人って、俺だよね?」
出来上がった枕を手にシンタくんが戻ってくる。

