な、なんで……?
その声に戸惑いながらも気力でフラフラと立ち上がり、何とか玄関の鍵を開けた。
「千波!!」
すぐさま視界に飛び込んできたのは、ミントグリーンのシャツの胸元。
私は必死にそれを掴んだ。
「……シ…ンタ……くん……」
何で?とか。
お兄ちゃんは?踊子さんは?とか。
聞きたいことがいっぱいあるのに何一つ言葉が出てこない。
「千波、大丈夫か?
って体すげえ熱いんだけど!?
すぐ病院連れてってやるからーーー」
私を抱き止めたシンタくんが狼狽えている。
こんな姿を見るのは初めてだった。
でも、そんな感傷に浸る前に
「う、うわーん!怖…怖かった~」
私は必死にシャツを握りしめたまま泣きじゃくっていた。
もう1人じゃない。
そう思ったら涙が溢れて止まらない。
「うえっ……うわっ……うー……」
子供みたいに泣きじゃくりながら、体から力がスーッと抜けていく。
それでも握ったシャツだけは離さなかった……。

