「はい。あげる」
「ありがと」
差し出された水のペットボトルを素直に受け取って、まずは両方の頬に当てた。
「気持ちいー!!」
思わず大きな声で言いながら、キャップを開け、口に運んで一気に半分くらいゴクゴクと流し込む。
体の中を冷たい水が落ちていくのがはっきり分かった。
「ハハ……すごいね」
「そっちこそ」
笑っているカイチくんだって手にしているボトルの中身は殆ど残っていない。
私たちは顔を見合わせてクスリと笑った。
「日吉、ありがとうね」
しばらくベンチに座ってお互い黙ったまま湖を眺めていたが、カイチくんがポツリと口にした。
私は、湖に向けていた視線を右隣へと滑らす。
「日吉を何とか元気づけたいと思ったら、こんなことしか思い付かなくて。
でも、ちゃんと付き合ってくれて嬉しかった」
茜色と藍色でグラデーションに色を変えつつある空をバックにカイチくんが微笑んでいた。

