「………は、走る…?」
涙は止まったけど、まだ赤いだろう目を丸くする私にカイチくんが大きく頷く。
「この湖は、1周1・3キロ。
それくらいなら走れるよね!?
ちょうど足元もスニーカーだし」
ビシッと指差された私の格好は。
白と緑のボーダーポロシャツにデニムのハーフパンツと白いスニーカー。
全て下北の古着屋で買ったお気に入りのコーディネートだけど、大学の友達からは
「夏休みのセミ取り少年にしか見えない」
と不評だった……。
……って、そんなことはどうでもよくて。
走るって言いました?
夕方とはいえ、まだまだ暑いこの過酷な条件で、湖を1周?
そりゃ、走れないことはないけど…。
何て答えたらいいのか分からなくて口をパクパクさせる私の右手を強引に引いたカイチくんは、湖沿いの遊歩道にズンズン進んでいく。

