「……ごっ、ごめん!」
自分で泣いてるつもりなんてなかったから、驚いて焦りまくった私は両手で顔をわたわたと擦る。
今まで、千波湖見て泣いたことなんて1度もなかったのに。
それだけ私が弱っているということなのか、
この懐かしい景色が心に痛かった。
だけど、わざわざ私をここまで連れてきてくれたカイチくんの気持ちはどうしようもないくらい嬉しくて。
色々な感情が私の中でごちゃごちゃになって、気付いたら……泣いてた。
「も、もうさぁー、いきなりこんな懐かしい景色見せないでよー。
私、自分じゃ気付かなかったけど、かなりホームシックだったみたい。
確かに千波湖は私にとって特別な場所だし?
不意打ち過ぎて泣けちゃったよー。
カイチくん、ずるい!」
目一杯明るく言って、カイチくんの左腕を叩く。
お願い……。これで誤魔化されて。
必死な私をフクザツそうな表情で見つめていたカイチくんが、暫しの沈黙の後発した言葉は……。
「走ろう!! 走ろうよ、日吉!」

