そう……。
湖の向こうに見える風景は全然違うけど。
本家(?)にはある象徴的な噴水がここにはないけど。
何よりも、こちらの方が随分小さいけど。
目の前の風景は、私たちの地元、千波湖によく似て見えた。
というより、きっと目の前の風景を通して私たちの頭の中に広がっているのは千波湖そのものなんだろう。
「千波湖って、日吉の原点なんだろ?」
前を向いたままカイチくんが言った。
「何でそんなこと知ってるの!?」
びっくりしてカイチくんに詰め寄ると、彼は目を丸くして私の方を向いた。
「そんなに驚かなくても。
いつだったか宮下に聞いたよ?
千波って名前は千波湖から付けたんだろ?」
あ、そっちね…。
安堵して息をついた私をカイチくんが不思議そうに見ていた。
私は、別の意味で千波湖という場所を原点だと思っていたから……。
私の初恋の原点となっている場所として。

