「…………」
私は、目の前に広がった光景に息を飲んで言葉もなく立ち尽くしている。
私たちが遊歩道を抜けてたどり着いた場所には、私が全く想像できなかった景色。
「ちょっとびっくりだろ?
ここが目的地。どうしても日吉に見せてやりたかったんだ」
得意気に笑うカイチくんを見上げながら、私はまだ言葉が出てこなかった。
私の目の前で、茜色の空の下に広がっていたのは、群青色の湖だった。
小さくさざ波が立つ湖面に夕陽が降り注いできらきら黄金色に輝いている。
そして、その周りを囲む桜の木。
花が溢れる遊歩道。
点在する木製のベンチ。
この景色は……。
「ミニ千波湖……って俺は呼んでるの」
カイチくんが呟くように言った。

