「ここ、いいよね?」
固まったままの私の返事を待つこともなく、私の向かいの椅子に腰を掛けるカイチくん。
「いらっしゃいませ」
水を運んできたくららさんに
「すみません。アイスコーヒー下さい。
後、こちらにアイスティーのおかわりも」
爽やかな笑顔を見せるカイチくんに微笑みながらくららさんは私に問い掛ける。
「千波ちゃんのお知り合い?」
「高校の同級生なんです。
僕もこの近くの大学に通ってるんで」
未だ言葉の出ない私に代わってカイチくんが答えた。
「そうなんだ。
卒業してからも会える男友達なんていいわね?」
くららさんは意味深な笑みを私に向けて下がっていった。
「日吉。いつまでそのまま固まってるの?
ねえ、俺が卒業の時最後に言った言葉覚えてる?」
ーーー東京ってさ、広そうで狭いから。
ひょっこり会っても無視したりとかするなよ?
忘れていなかった私は、ようやく一言だけ発した。
「……久し振り」

