『千波とは、ずっとこのまんまでいたいな……』
この一言で思いきり突き落とされた。
蕩けるように甘かった時間は、一瞬で苦いものに変わってしまった。
その時の私はといえば、すぐには状況を飲み込めずグラスを見つめたまま固まり、
ようやくシンタくんの言葉が脳内に届いたと思ったらすぐに熱いものが内側からバァーッと込み上げてきて。
それを絶対に溢さないように歯を食いしばらなくてはならなかった。
滲んで揺れるピンク色のカクテルを視界に映しながら、何でシンタくんがそんなことを言い出したのか考えようとしたけど、頭の中がとっ散らかって出来なかった。
『…………私は…やだ……』
辛うじてそれだけを口にして、後は黙ったまま残りのカクテルを飲み干した。
シンタくんも何も言ってくれなくて、私たちは押し黙ったまま。
『ごちそうさま。今日はありがとう…』
それだけ言って、店を出た。
そして今日まで、シンタくんからの連絡はないし、私も電話もメールもしていない。

