「あー、さっきのランチも撮っておけば良かった。
何で忘れちゃったかな?」
嘆きつつカクテルにスマホを向ける私に
「そんなのまたいつでも作ってやるってば。
ーーーあ、ちょっと撮影待って」
シンタくんが何かを思い付いたようにカクテルを取り上げた。
「?」と首を傾げる私にちょっと得意気に微笑んで、ササッとカクテルに手を加えてすぐにもとの位置に戻してくれる。
「あ……」
ピンク色のカクテルに小さなグリーンが浮かんでいた。
「いつもは飲みやすさ重視で俺はあまり使わないんだけどね。
今日は撮影に合わせてビジュアル重視。
ミントの葉を添えてみました」
「ミント……」
シンタくんの言う通りでシンプルだったカクテルにほんの少しグリーンのアクセントを加えただけで、華やかさがぐっと増していた。
それにグリーンは、シンタくんが一番好きな色。
大切なカクテルにその色が加わったことが、私はとても嬉しかった。
「綺麗だね……」
「あのさ。早く撮影してくださいね?
温くなっちゃったら悲しいから」
撮影を忘れてカクテルに見惚れる私を苦笑いしながらもシンタくんは優しく見守ってくれていた。

