「これも形に残らないのに…」
嬉々として差し出されたカクテルを見つめる私にシンタくんが呆れたように呟く。
確かに『食事じゃ形に残らないから』と気を遣ってくれたシンタくんに私がリクエストしたのはこのカクテル。
これだって飲んだらなくなってしまうんだけど。
でも、どうしてももう一度これが飲みたくなってしまったのだ。
シンタくんが私のために考えてくれた(突然思い付いた、と言っていたけど)
このオリジナルカクテルを。
「あ、そうだ!」
急に大きな声を出して傍らのバックをガサゴソやり始めた私にシンタくんが首を傾げる。
「何してんの?」
「残せるじゃん。ちゃんと、記録に」
スマホを取り出してにこりと笑う私に
「あー、そうね」と苦笑いしながらシンタくんが頷く。
写真に残す、という最もシンプル且つ簡単な方法を二人揃って失念していた。
そのことに私も思わず笑ってしまう。

