「でも、何でシンタくんのお母さんとその姉夫婦が一緒に送ってくるわけ?」
「そりゃ、一緒に住んでるからでしょ。
あれ?千波は知らなかったっけ?
俺のお袋が千葉に住んでるの」
「……知らない」
シンタくんはずっと川越に住んでいて実家だから、今もお母さんと暮らしていると思っていた。
「親父が死んでから体も心も壊しちゃってね。うちのお袋。
ずっと入院してたんだけど、姉夫婦が千葉で一緒に暮らそうって言ってくれて。
川越には親父との思い出が多すぎるからそうした方が良いって医者にも勧められてさ。
おかげで今はすっかり元気になって、向こうで農家手伝ってるの」
シンタくんの話は知らなかったことばかりで私はただ黙ったまま俯いてしまう。
5年前にシンタくんのお父さんが事故で亡くなったことは知っていたけど、それ以上のことは兄も話してくれなかった。
「おい。何で千波が暗くなるの?
そーゆーつもりで話したんじゃないんだけど?」
前から手が伸びてきて俯いた私の頭を揺する。
「だって、何も知らなかったから……」
「話してないんだから当たり前でしょ?
あのね?うちのお袋は元気すぎるくらい元気だから。
あっちの生活がよほどあってるみたいで。
俺も落花生や野菜の仕入れついでにチョイチョイ顔出してるし。
だから千波がそんな顔するような話じゃないよ。
ほら、アイス溶けるから早く食べろよ」
シンタくんに優しく微笑み掛けられて、私は頷きながらスプーンを動かした。

