「俺?」
ピタリと笑うことをやめたシンタくんが私を正面から見据える。
「そう……俺」
自分から質問しておいて早くも後悔しそうだったけど、私はコクリと頷いた。
「うーん……」
しばらく顔を伏せて思案していたシンタくんが不意に視線を私に向ける。
「まず、一般論ね。
俺は女の子が背伸びしてメイクやお洒落に力を入れること否定はしない。
むしろ肯定的かも。
背伸びしたい人って、その姿を見てもらいたい相手がいたり、そういう風になりたいって目標持ってる人だと思うから。
そうやって頑張ってる姿勢は好きだよ。
あ、だからむやみに
『ちょっとやってみたかっただけ~。思い出づくり?』
みたいな軽いノリで厚化粧する子はパスね」
ちょっとギャルっぽい語り口調まで織り混ぜて話してくれるシンタくんに大きく頷く。
「君の兄貴は『素が一番』っていう考えが強いから。
昔、春花が俺の彼女の真似をして大人っぽいメイクしたら怒ってね。
その時言ったんだよ。
『大人ぶるのと大人になることを履き違えるやつはキライだ』
ってね。
春花の前で年上だった俺の彼女を綺麗だのカッコいいだの誉めちぎっておいてそりゃないだろって思った。あの時。
春花は清海のためにそんな化粧をしたのにね。
ま、それで喧嘩になって、最終的には春花の気持ちがよく分かったからってあいつが謝って決着したんだけど」
懐かしい思い出話までしてシンタくんが目を細めた。
「あ、ごめん。ちょっと話が逸れた。
それで、昨日の千波についてなんだけど……」

