食事中は色んな話をした。
シンタくんは、昨日この店を出た後、私が踊子さんの実家に行ったことをかなり驚いていた。
「何でそんなことになったの?」
「分かんない。ここ出てすぐに踊子さんのお母さんから電話があって、後は流れで?
途中で踊子さんがケーキ買ってくれて、私初対面なのに自分のバースデーケーキ持参でお邪魔しちゃったよ。
それなのに踊子さんのご家族みんなで歓迎してくれて、おめでとうって言ってもらえてすごい嬉しかった。
お兄ちゃんは図々しすぎる、って呆れてたけど。
あ、陸くんって子にも会ったよ」
長々と喋る私にフンフンと相槌を打ってくれるシンタくんの優しさが嬉しい。
まだ開店前なので、シンタくんはいつものユニフォームではなく完全私服。
カーキ色のワークパンツにオフホワイトのVネックシャツ。
何でもないようなシンプルな格好なのにとんでもなくキマって見えてしまうのは、もはや私がシンタくんに盲目的になりすぎているからなのか?
キャップも被ってないからクセの全くないサラサラの黒髪が陽光にキラキラと輝きながら目元で、耳元で揺れる。
気が済むまでその姿を目に焼き付ける。
誰にも邪魔されずシンタくんを独り占め。
今、この時間。
私は人生で一番幸せかもしれない。

