「もしかして心配してくれてるの?」
テキストをテーブルにポンと投げて、兄が私の顔を覗き込む。
「ちょっとだけ……」
正直に答えて俯いた私に兄は小さく吹き出した。
「大丈夫。踊子とはいつもキチンと話し合ってるから。
今は、好きなだけ仕事に夢中になればいいって言ってくれてる。
俺が仕事のペースに慣れて余裕が持てるようになったら思い切り甘えるから覚悟しとけとも言われてるけど」
クスクスと笑いながら兄は続ける。
「そう言われたからって鵜呑みにして今の踊子を蔑ろになんてしてないし。
ってか、出来ないし。
今日は走太が来てたりお前がいるからイチャイチャしてないだけ。
こうやって仕事を持ち込んでもラブタイムは必ず確保するようにしてますからご心配なく」
ラブタイム……。
英語教師らしくそこだけやたらと発音よく言うもんだから、その単語に反応して赤くなってしまう。
「お前、何考えてるの?」
兄はそんな私を楽しそうに笑った。
そして、ひとしきり笑った兄は急に真面目な顔つきになって私に宣言する。
「千波、俺は本当にもう大丈夫だから」

