「お風呂、お先に頂いちゃいました」
頭をバスタオルでぐるぐる巻きにしたままソファーで予備校のテキストに目を通している兄に声をかけた。
走太さんが帰ったあと、私はちゃっかり一番風呂を頂いてしまって、今は踊子さんが入浴中。
そして私は、兄と2人きりになるのは意外にも久し振りだということに気付く。
「あぁ、冷たいもの飲みたかったら勝手に冷蔵庫から出しな。
って言っても水かビールしか入ってないけど」
「じゃあ、ビール」
「……久し振りにデコ思い切り弾いてやろうか?」
「冗談だよ。
あー、でも19なんてすっ飛ばしてさっさとハタチになりたいよ。
私も早くお酒飲んでみたい」
ちょっと不貞腐れて兄の隣に座った。
兄は苦笑いしていたけど、何も言わずに視線を本に戻す。
兄は予備校では高校生に英語を教えているらしい。
「ーーー家に帰ってからもずっと勉強してるんだね」
しばらく集中している兄を眺めたあと、私がテキストを指差しながら言うと、
兄は私の顔をじっと見て、手にしていたテキストをパタンと閉じた。

