「着いた……。ここだよ。
どうぞ?」
「近っ!」
踊子さんに連れられて来た立派なお宅は、兄たちが住んでいるマンションのすぐそばだった。
近いとは聞いていたけど…こんなに?
すぐ目の前の公園を挟んで兄たちのマンションが見えた。
正に『目と鼻の先』じゃん……。
しかも、踊子さんの実家は私がこの世で一番苦手な…………歯医者さん。
まさか、この場で歯を見せろなんて言われないだろうけど、私の緊張を倍加させる。
「お姉さん……やっぱり突然伺うなんて失礼だよ。
日を改めてキチンと…」
「大丈夫大丈夫。
今日はね、お客さんが来てるからご飯もたくさん作ってあるんだって。
私たち2人ぐらい増えても問題ないから」
あたふたしている私に笑いかけて、踊子さんは
「ただいまー」
と玄関を開けてしまった。
と、同時に
「アネキだー!!」
元気一杯の小さな男の子が出てきて、びっくりした私はその場で小さく跳ねてしまった。

