『きっと、私たちより先にあんたがお会いする機会があると思うから。
その時はキチンと礼儀正しくご挨拶するのよ?分かったわね?』
母の言葉が思い出される。
お母さん、思った以上にその日は早くやって来ました。
私は、今、踊子さんの実家に向かっています。
踊子さんに買ってもらった私自身のバースデーケーキを携えて。
自分のバースデーケーキと一緒にご挨拶に伺うなんて、失礼ではないのだろうか?
私が踊子さんのご家族に気に入られなかったら……。
お兄ちゃんとのことは破談……なんてことはないよね?
相当緊張している私の前を踊子さんは鼻唄混じりにご機嫌で歩いている。
「千波ちゃんに会わせたいヒトがいるんだよ」
楽しそうに話しながら。

