「おい、そっちもっとちゃんと持ち上げろよ!」
「こっちは目一杯持ち上げてるよ。
そっちが合わせてくれないと」
「あんたに合わせてたら腰が痛むわ!!」
「だからって俺の背は伸びません」
身長差20センチの男同士のいがみ合い。
ちょっとおチビな兄とかなり大きい走太さんと。
アンバランスな2人は案外いいコンビかもしれない。
そんな2人に力仕事はすべて任せて、私はリビングのレイアウトを踊子さんに託されて張り切っていた。
この部屋は今まで兄が一人で住んでいて、そこに踊子さんが引っ越してきた。
かなり贅沢な1LDKは、踊子さんが持ち込んだ荷物が入ってやっとまともな生活感が出てくるように思う。
今までは殺風景過ぎて兄が寂しそうだった。
何故こんなに良い部屋に兄が住んでいるのかというと、この部屋のオーナーがシンタくんだから。
バイトを転々としてその日暮らしだった兄を助けてくれたのは、踊子さんだけじゃなかったということ。
シンタくんや他の友人たちも兄を支え続けてくれた。
私の自慢のお兄ちゃんは、とても恵まれた人だと思う。

