あんぐりとは、こういう顔の事を言うのだろうか?


口を開けたまま、まぬけな顔しやがって。


「どうしたの?」


半分キレそうになりながら問いかけてみれば。


「今の何…?」


呆然とした顔で質問を返された。


「何って、何が?」


暑いんだからイライラさせんなよ。


「だからー、今のヘディング」


ん?


んん?


「すげーキメ球だったじゃん」


「!!!」


しまった!!


思わず反射的にボールを打ち返してしまった。


ふと周りを見渡すと、部員全員が俺を見ていた。


「マ、マネージャー。あんた一体何者?」


そう言って、副キャプテンの後藤が近付いて来た。


「なんでそんなことが出来るんだよ」


や、やべぇ。


「ぐ、偶然よ。

偶然おでこに当たったのが、跳ね返ってゴールに入っただけじゃない?」


「いやいや。あの身体の使い方は素人には出来ねぇって」


「ホントに偶然だってば!」


ここはもう知らねーフリしとくしかねーよな。


ふぅ。


無意識って恐ろしいな。