「おい、花音。

そんなに急に起き上がって平気なのか?」


花音って。


おじさん、俺は海司だぞ?


「立てるなら、ちょっとこっちにおいで。

隣の集中治療室に海司君がいるから」


おいおい、おばさんまで。


悪い冗談はよせ!


ベッドから出て辺りを見渡してみる。


ここはどうやらナースステーションのようだ。


重い身体を引きずりながら、ナースステーションの隣にある厚いガラス窓の前に立つと。


「……っ」


あり得ない光景に目を疑った。


頭にはグルグルに巻かれた包帯。


鼻には人工呼吸器が取り付けられている一人の患者。


足元には、親父と母さんと姉貴が立っていて。


あそこで寝ているのは…。


まさしく俺だった。


一体どういうことなんだよ。


何が何だか…。


しばらく呆然と立ち尽くしていると、親父達がナースステーションにぞろぞろと出て来た。