「あっ、あなた気がついたのね」


俺の目の前にひょこっと顔を出す一人の女性。


誰?


初めて見る顔だけど。


「ここは病院よ。あなた救急車で運ばれて来たのよ」


病院?


えっ?じゃあこの人、看護師さんか何か?


「あなた交通事故に遭ったのよ。少しケガしちゃったけど、無事で良かったわね」


交通事故……。


だから身体中が痛かったのか。


そう言えば、誰かの「危ない」って言う声が聞こえたんだ。


飛び込んで来るバイクが一瞬だけ見えた気がするけど、その後の記憶が全くない。


「ご家族を呼んでくるわね。皆さん来られてるわよ」


みんな来てるんだ。


救急車で運ばれたんだもんな。


当然だよな。


ふぅと息を吐いたら、霞んでいた視界がやっとハッキリ見え始めた。