ピンク色の、ぷっくらした柔らかそうな萌の唇に、自分の唇を重ねた。
萌の身体が少し震えた気がした。
萌の唇に触れた瞬間、俺はもう、後戻りできなくなった。
「流矢、ありがとね」
俺の隣で、裸のまま寝転がっている萌が、俺に笑顔を向ける。
俺と萌は、裸のままベッドの中にいる。
そっか。俺、萌と…
「流矢、本当に夕ヶ丘行くの?」
夕ヶ丘…
「まあ…萌もだろ?」
「うん。でも…流矢は野球でいくんでしょ?」
「そうだけど」
「私、流矢と洸耶のバッテリーが好きだったんだよね」
洸耶という名前は、今聞きたくない。
しかも、萌の口から。
「ふたりとも、仲良かったじゃん。流矢が他の人とバッテリー組むの、なんか嫌だな」
萌は知らない。
俺が、洸耶とあんな言い合いしたことなんて。
俺と洸耶は、もう終わったのかもしれない。
洸耶とは…もう、バッテリーなんか組めない。
「流矢、洸耶と野球してる時、輝いてたよ。だから、流矢が他の人とバッテリー組むのは、私見たくない」
俺は、夕ヶ丘で野球するべきなのか。
それとも、するべきじゃないのか。
実際、目の前にいる萌は、洸耶とバッテリー組んでいないと嫌だって言ってる。
でも、俺の夢は甲子園出場。
夕ヶ丘で叶えたい。
もし、洸耶とバッテリー組むとしたら、風凪にいかないといけない。
でも、風凪は進学校。野球と勉強なんて、俺には両立できるはずがない。
「…俺は夕ヶ丘行くから」
俺はベッドから抜け出して、散らばっている制服を着る。
着替え終わり、萌の散らばった制服を取り、それを萌に渡した。
そして俺は、無言で部屋を出た。
