乗り込んだ電車には彼がいた。
だが、何かがおかしい。
彼が二人に見える。
私は目を擦ったり、頬をペチペチと叩いたりするが、彼が二人見えることにかわりはない。
「なぁちひろー。」
という片方と
「んー、まひろどうした?」
と問いかけるもう片方。
うそでしょ…?
彼は…双子?
田舎のローカル線で土日などの休日は利用者が少ないこの電車。
人が少ない中で見つけた双子。
一人はテニスラケットなどを入れるおっきいバッグ、一人はサッカーシューズが傍らにある。
もしかして、違う人物をいままで同一人物として見てきたかもしれない。
そう思って、曖昧になり始めた記憶たちをいくつも手繰り寄せる。
確か朝は…
いつもおんなじリュック背負ってたよな…。
あ、そう言えば一回だけ帰りの電車が同じだったっけ。
えっと…


