部長と別れ、家路につく。
二人は当たり障りのない会話をしていたが、ひかりが話を切り出した。
「部長が言ってた誘拐犯…満月ちゃんのことじゃ、ないよね…?」
願っているかのような疑問。
俺はまだ、答えられない。
「本人に聞くしかないだろ。ひかりなら、嘘ついてるかわかるんじゃないのか?」
ひかりは、人の感情を視覚的に見ることができる。
嘘も、それで見えるのかと思ったが
「いや、無理だよ。罪悪感とか、不安とか、不確定な要素しか見えないから嘘って決めつけることはできないよ」
ひかりは無理だと答えた。
嘘か誠かは、本人次第ってことだな…。

「ただいまー」
「ただいまー!満月ちゃん!いいこにしてた!?」
俺の声の後に続くひかりの元気な声。
満月は眠そうにしながらテーブルで折り紙をおっていた。
新聞紙を正方形に切って、折り紙の本を見ながら。
「おかえり、ひかり、明。意外と早かったな」
満月はふにゃりと笑い少年らしい顔を見せた。
「昼はまだだよな?すぐに作るから二人とも待ってろ」
明と、思いの外あっさりと名前を呼ばれたので驚きながらエプロンをつける。
ひかりははーい!と返事をし、満月に折り紙を教えてもらっていた。
折り紙の本は俺の物だからひかりはあまり知らないから。