この声が君に届くなら …


裕人が殴られるッ …


「危ない、裕人!!」


あたしは思わず叫んだ。
でも…


裕人は男の拳を受け止めた。簡単に。


もう一人殴りかかってきたけど、それもヒョイとよけて、
背中に蹴りを入れる。




「クソッ…!」




「なぁおっさんたち。俺の事、中学生だからってナメんなよ。
俺、柔道黒帯で、ボクシングもやってたから。」



「だから次、こいつに手ぇ出してみろ。痛い目に合うのはそっちだかんな。」




裕人が、今まで聞いたことがないくらい低い声で言う。
声だけで、背中がゾクッとした。




「は…?カッコつけてんじゃねぇぞ、クソガキ!」




そう言いながらも、男たちは逃げて行った。



「ひろ、と…」



こっちに背を向けたままの裕人に、声を掛ける。

怖かった…

あたしは、何故か泣きそうやった。



「梨花子…
お前、馬鹿ッ!!!」



急に怒鳴られて、あたしはびっくりした。



「え…?」



「え…?じゃねぇよ!あんなおっさんにノコノコついて行きやがって…
俺が来なきゃどうなってたか…もう、こんな事すんなよ。頼むから…」




…裕人、本気であたしのこと心配してくれとるん?



あたしのこと、大事にしてくれる人…ちゃんとおったんや。




そう考えると、急に涙が出てきた。



「ぅ…ひっく…うぅ〜 ひろ、とぉ…
あ、たし… 」



すると裕人が、あたしを優しく抱き寄せて、
頭をなでた。



「大丈夫やけん。もう、何も言わんでいいけん。
今まで、辛かったなぁ…気付いてやれなくて、ごめんな。」



「うぅ… 辛かったよ。苦しかった。
あた、し、いっつも、いえでひとりぼっち、でッ…」



「大丈夫やって。梨花子は、独りやない。
おれがおる。ずっと、お前を側で支え続けちゃんけん!
だからもう…泣くな。笑え!」


あたしは、裕人のこの言葉に、救われた。

心の奥底につっかえとった何かが、スーッと消えていったみたいに、
気持ちが楽になった。


それからしばらく、あたしは裕人の腕の中で泣きじゃくった。