この声が君に届くなら …


3年前、あたしが中1になった頃から、うちは崩れ出した。






周りから見ても、仲の良い3人家族。

夫婦円満で、近所の人達には
『理想の家族』なんていわれるような家族だった。


そう、『だった』。


崩れ出した原因は、お母さん。






お母さんが不倫しとったことが、お父さんにバレたことが原因。


それを知ったお父さんは、もちろん大激怒。



毎日毎日、同じような事で喧嘩ばっかり。

皿が割れる音、椅子が倒れるような、大きな音。

そして、叫び声。


あたしは家に居たくなくて、夜は街を歩いとった。

そして一晩中、ベンチに座ってボーッとして。

朝が近くなったら家にこっそり戻る。



警察に補導されたら、もちろん親が呼ばれる。

その度に、お父さんもお母さんも、あたしを殴る。

あたしは反抗して、次の日も家を抜け出した。


街は人通りもまぁまぁあるし、大丈夫だろうと思っとった。


でも、夜中家を抜け出すようになって、
2 ~3ヶ月ぐらい経った頃だったと思う。


「ねぇ君、一人でなにしてんの?
もし良かったら俺らと遊ぼうぜー」


柄の悪い、高校生ぐらいの男達は、
にこにこしながらあたしの返事も聞かんで強引に腕を引っ張った。


まぁ、あたしも毎日いらいらしとったし、
もうなんでもいいや。普通に優しそうやし、まぁ大丈夫やろ。

そう思って付いて行こうとした。




ーーその時 、







「おい、おまえら。汚い手で梨花子に触んじゃねぇよ。
早く離せ。」








後ろから引っ張られたと思ったら、裕人がおった。


「え、裕人、なんしよんの!?」



「お前こそ、何やっとんのか。
ほら、早く帰るぞ。」


裕人があたしの腕を掴んだまま、引き返そうとした。



「おいおい、ちょっと待てよクソガキ。
今俺らの手ぇ、汚いっつったよな?」


「子供だからって手加減すると思うなよ?」


さっきまでとは打って変わって、男達は大きな声で怒鳴りつけた。



…怖い 。



思わず、ぎゅっと目をつぶった。


「大丈夫やけん。」


裕人が耳元で囁く。自然と体の力が抜けていき、目が開いた。


その途端男のうち1人が、裕人がに殴りかかった。