「うわ~!!周り、ビルばっかやなぁ!
やっぱ都会は違うんやね~」
あたしが大声で辺りを見回すと、
隣で幼なじみの山田 裕人( ヤマダ ヒロト )が頭を抱えた。
「おい、田舎もん丸出しやめろよ!!
みんなこっち見とるやんか!お前ただでさえ声でかいんやから!」
あたしは広瀬 梨花子( ヒロセ リカコ )。15歳。
今日はある目的の為に、とある田舎から
中学卒業と同時に『上京』してきた。
「い~から い~から!そんなこと気にせんの~!!
それにしても、駅に人が多すぎるッ!!」
「やなぁ。駅から外に出るのに30分かかっとんよ」
「はぁ~!!田舎とは比べもんにならんくらい
ビルも駅も道も…ぜ~んぶおっきいなぁ!!」
あたしは今日から、そんな中で生きていくんや。
ある2人の人と交わした、約束のために。
っていっても、“かぁくん"のことは、ほとんど覚えとらん。
あたしの家の隣に住んどったけど、
あの後、家庭の事情で引っ越してった。
その引越し先も、今どこにいるのかも知らん。
やけど、約束だけはしっかり覚えとる。
やけんあたしは、何があっても絶対に負けないって決めとる。
かぁくんとの約束を破りたくないけん。
…例え、相手が忘れとったとしても。
「……い、…かこ!お~い!梨花子、帰ってこ~い!!」
わッ!しまった、ぼーっとしとった!!
「何、考え事かよ?」
裕人が笑う。笑うとえくぼができる笑顔が、あたしは大好き。
裕人とは、もう9年ぐらいの付き合いになる。
かぁくんが引っ越してった後、かぁくんの家だったとこに
裕人が引っ越してきた。
裕人はあたしのことよく理解してくれとるし、
家族なんかよりずーーーっと大切な存在。
「ううん、何でもない!早く行こ!」

