「蒼衣 柚月さん!」

 始まったばかりの昼休み。
 目の前には、同じクラスの風紀委員・長谷川 繭が立ち塞がっている。

 視線がかち合う寸前、柚月は眼光鋭く睨みつけてやった。

「はあぁぁ?」

 自分でもあからさまに威嚇したとわかる表情と声だった。

 意識しなくとも、たじろいだ長谷川や周囲を行き交う生徒が驚いた表情でわかる。

 それでも、やめようとは思わない。
 どうにも、ささくれた気分が収まらないのだ。

 ふたりが対峙する廊下は、すでに昼食時の混雑に巻き込まれつつある。
 用件なら、とっととすませてもらいたい。

「ふ、副委員長がお呼びです。一緒に生徒指導室へ来てください」

「副委員長~?」



 風紀委員長ではなく、副委員長?



 誰だ、ソレ。
 さっぱり顔が思いつかなかった。

 できることなら関わりたくない。


 異世界では貴族や役人に牙を剥く柚月だが、学校という身近な場所ではなるべくおとなしくするつもりでいた。


 自分が他人にどう思われようと知ったことではない。