その自主性のなさに、柚月は鼻を鳴らした。


(自分のない連中)


 と、胸中で毒づく。

 何でもかんでもひとりで決める東雲のような男も嫌いだが、自分では何も考えずに徒党を組む連中も同じくらい嫌いだった。


 少し、暴れてみるか。

 莉子が店員を言いくるめて、警備員を連れてくるには、まだ時間がかかる。

 頼りない保険だが、ないよりはいい。

 それまで派手に暴れて注目を集めなければ。
 連中が、迷惑に思って逃げ出すまで。


 柚月が固く拳を握り締めると、背後から震えた声が耳に届く。

「柚……!」

「大丈夫。そのまま、壁を背にしてて」

 言い終わらない内に、前へ駆け出した。

 少しでも栞への危険を減らすために。