クッキーを咀嚼する。さくさく。

「そうさせたって?」

当然、アキは聞き返す。あたしは部屋を見回した。
ミステリー小説の多い本棚。下の方にファッション雑誌。上にはぬいぐるみとかガラスの置物とか。

「……え?」

堂本さんがすっとぼけた声を出す。それに視線を戻した。

「記憶喪失? ここはどこ私はだれ?」

「違います」

「今堂本さんが『あーゆー風にしたのはわたしざます……』って言ったんだよ? 覚えてない?」

「ざますとか言ってないんだけど!」

目を逆三角形にして怒る堂本さん。
アキは静かに紅茶を啜った。