学校では、ふざけるようにアネゴと呼んでくるのに、今日は一度も呼ばれていない。
何故か、なんて思う必要もない。
別人だっただけ。彼に似た別人が何をしようとも、私はいのりちゃんに話す必要はない。
「すーちゃん? どうしたの?」
「ううん」
リビングに入る手前で止まっていた私を怪訝な顔をしてゆっくり近づく。
首を振って答えたのに、お母さんは怪訝な顔のまま。
嘘を吐くこと。周りに合わせること。見栄を張ること。他人を嘲笑うこと。誰かを仲間外れにすること。
いのりちゃんと仲良くなる前、友達と絡む方法はそれくらいだと思っていた。
そんなことばかりでも、なかった気がする。そんな風に笑えるようになれて、良かった。
end.
20150305