手が離されて、溜息を吐かれた。

「何だよ」

「あーあ、ついにいのりんが棚に並ぶ日が来ちゃったよ……」

「祈璃を勝手に出荷すんな」

「出荷じゃなくてディスプレイ!」

「うっせえ、祈璃が起きる」

中学のときは顔を合わせる度に喧嘩をしていた。高校に上がってから、というよりも祈璃が家に来るようになってから減ったけれど。

鼻で笑いながら「せいぜい振られないよーに」とナツがキッチンに入っていく。

「あ、祈璃の分も作って」

「うん。ねえ、いのりん、昨日のお祭りから来てるの?」

「ん」

「昼何食べたの?」