でも藤沢さんのことは、何も知らない。

「"大変だったね"」

ぴく、と震えていた肩が揺れる。

「"辛かったね"」

貧乏で悩んだことのないあたしに同情されるのはムカつくかもしれない。
同情、に本当はならないから。

「そっか、藤沢さんの周りのひとは、」

「……うん?」

「藤沢さんに本音を言わせなかったんだ。嘘ばっかり吐かせて、笑ってたんだ。それってすごく悲しいね」

自分で言って、安っぽい。アキのように上手く慰めることは出来ない。あたしにだって不得意なことはある。

藤沢さんは声も漏らさずにたくさん泣いていた。



end.
20150902