あたしには分からない。
嘘を吐くこと。他人を欺くこと。自分を騙すこと。
それが何の足しになるのか考えたことすらない。

「うち、昔から貧乏で。本当、誰にも、関係無い話なんだけど」

ゴン、と頭をロッカーにぶつける音。

「……知ってる。こんな話信じられるわけないよね、今までずっと嘘ばっかり吐いてたんだから。狼少年も甚だしい。狼に羊どころか自分も食べられて死んじゃえば良い」

独り言が吐露される。
あたしは横から肩を抱いた。

あたしより少しだけ高い背。

藤沢さんからは、藤沢さんの匂いがした。