名倉の返事は聞こえなかった。そして聞かなかった。
廊下を曲がった先で委員長が歩幅を緩めた。
「カツアゲ? 簡単に二万とか出して良いのかよ」
か……カツアゲで俺は二万をすんなり出す人間に見えるのか。
それは確かに変わってる。
二万あれば新刊の漫画が何冊買えると思ってんだ。
「いや、あれは旧友みたいなもんで。借りてた金を返しただけ」
「え、友達?」
「まあ、そんな感じ」
歯切れの悪い言葉に委員長は納得した顔はしなかったけれど、無線から声が入って会話は中断した。
時計を見ると、正午近く。
名倉が堂本さんに出くわしませんように。午後も平和に終わりますように。
end.
20150823