これを塗っている最中だった。電話がかかってきたのは。

「ふったの」

「なんでまた」

今週の土曜日、映画を観る話になった。映画館の雰囲気もスクリーンで観る映画も大好き。だから観たい映画を言った。
でも、彼の方は違うものが観たいって言ってきた。

「まさかそこで喚く程馬鹿じゃないよね?」

「なわけないでしょ。だったら、別々に観ようって言ったの」

「恋人としてどうとは思うけど、まあ良い案だね」

「ね! あたしもそう思ったよ、それをだよ!?」

思わず大きい声が出てしまった。休み時間なのでそんなに目立たない。