大人しく腕に納まっていたわけではない黒猫は、じたばたし始める。堂本さんの胸を蹴って行ってしまった。

「あーあ……」

「野生に返しておやりよ……」

「猫可愛いよね」

「すーちゃんママなら飼ってくれそうだけど」

「アレルギーだから駄目なんだよね。実は私も」

と言いながら服から見える首元が赤くなっていた。

「堂本さん馬鹿か! 超馬鹿か!」

「時間経ったら消えるよ」

「なりふり構わずそういう行動をする人怖すぎる……」

「いのりちゃんに言われたくないんだけど!?」

シートに座る堂本さん。
大きく伸びをした後、空を見上げた。