いのりちゃんの手が私の手を弱い力で握った。

「酷いこと言って、ごめんね」

朝日が完全に昇ったのを見届けて、いのりちゃんが言葉を発する。

「いのりちゃんが……謝った……」

「あたしだって日本人なんだから謝りますよ」

酷いこと、の意味は説明されずとも分かる。
私も言わないといけないことがある。

「私、別に邪魔したいとか、奪い取りたいとか、そんなこと思ってない」

いのりちゃんは彼を好きだから、あんなことを言ったのだと思った。

「知ってるよ、知ってて言ったの。あたし、三人でいるの楽しいもん」

笑い声が耳に優しい。