眠れなかった。

寝返りを何度も打って、気付くと深夜を過ぎていた。枕元の時計は正確に秒針を進めている。起き上がったものの、携帯を見つめるだけ。

触る勇気は無かった。

溜息を吐いて、膝を抱く。家の中は静かで、多分誰一人として起きていない。

急に液晶画面が光ったので、顔を上げる。

そこに表示された名前を見て、躊躇いを忘れて出た。

「もしもし」

今日も学校。終業式直前だから、午前中で帰ることが出来るけれど、朝はいつも通り。

相手もそれを分かっているのだろうか。

『もしもし、眠ってた?』

少し嬉しそうな声が聞こえる。