「俺らはさ……やっぱり終わってたんだよ。あの5年前に……。
 そのピアスを駆け引きに使ってしまったがために……」

「……」


目線を送った、美空の手に握られたピアス。

美空もそれに目を落とした。


「大事なもんなんだろ?母親の形見なんだから……。
 もう駆け引きとかに使わず、大事に持っとけ」

「っ……」


ぽたりと、ぎゅっと握った指先に、美空の涙が零れ落ちた。

肩を震わせ、悔しそうに泣いている。


プライドが高くて
努力家で
いつも上を向いていた彼女。


その彼女が、下へ俯き
滅多に見せない涙を流している。


だけど俺に、それを抱き留める資格はないから……。



「美空……。
 ありがとな。こんだけ大きくなっても、俺を想いつづけてくれて……。

 お前なら、俺よりももっとふさわしい男がいるから」


「…っ……バカ……絶対にあたしを振ったこと、後悔させてやるんだからっ……」


「ん。楽しみにしてる」



最後の最後、美空はいつもの勝気な笑顔を向けた。



無名だった彼女。
泣いて悩んで立ち止まっていた彼女。

その背中を押し、ともに歩いてきた彼女。


いつしか彼女は、俺の手助けなんか必要としないほど強くなり
誰もが認めるスーパーモデルとなった。


だから大丈夫。
彼女なら、この先も強気で勝ち抜いていくと思うから……。



「仕事、頑張れよ」

「言われなくとも!」



俺は今日
ようやく5年前の恋に終止符を打てた。